服作りCOMMUNICATION Vol.17
自分達で仕事を作り出せる会社に
有限会社ファッションしらいし 代表取締役 白石 正裕 氏
当社は私が二十三歳で独立して設立。今年六月で二十周年を迎えます。都内で一から企業を作った最後の会社です。最初は死に物狂いで、ただ技術だけが頼りでした。毎年、高卒の新人を何人か採用し、その子たちに技術を教える。毎年その繰り返しで、四年目くらいにようやく組織の基盤ができました。
東京で後発でやれてきた最大の理由は、技術を持っていたことと、都内でやっていたため若い人の求人にあまり困らず、彼女らにきちんと技術を伝承できたことです。また、それにとどまらず、優れた人材がいて、教えたノウハウで逆に上にいく子や教えられる子がいた。モノ作りは感覚の部分が大きい。ラインで流してものを作っているのではなく、多能工の方式を取っているので、感覚的なものが少ないと品質につながりません。
最初は高卒でしたが、三年くらい前から専門学校生が多くなってきた。専門学校もかつてはアパレルなどを目指す学生が多かったが、今はモノ作り志向も追い風になっている。パタンナーになりたいが、縫えないとなれないらしいと学生が言う。将来パタンナーになりたいといって入ってくる子もいますが、まずは縫製をやらなくてはと、方向性をもって入社します。本人たちがそう望んでいる。うちの研修システムにのっとると、ジャケットが一人で作られるようになるのに最短で二年半。これ以上早くには絶対ならない。手、体で覚える感覚は一緒に伴わないとできない。二年半がぎりぎりです。
当社の社内塾は、三カ月単位のカリキュラムがあり、最後に試験があります。試験に合格しないと次に進めない。社内塾「その一」に専門学校卒の子は入れる。スカートの工業パターン化とタイトスカートの縫製。パターンは出来るが、縫製で落ちる。社内塾「その二」はポケット作り。社内塾「その三」はテーラードジャケットのパターンの工業化と縫製。これは難しい。工場でないと教えられない。
講師が社内で育ってきたのは大きい。私は口(くち)パターンナー。最近は口CADをおぼえた。最初は自分で全部覚えてからでないと、次に進まなかった。新しいミシンを導入すると必ず全部自分ができるようにする。そうでないと次に教えなかった。だから何十年もゆっくりだった。途中で、ドレスを作るとき絵も自分で描こうと個人レッスンを一年半受けた。ところが入ってきた社員がうまい。こんなことしている場合じゃない、語れる程度に知識として入れておいて、突き詰めるのは社員がやったらいいと気づいた。
取引先にも恵まれました。八年くらい前たまたまアシダさんさんの仕事をするようになったが、モノ作りの考え方がしっかりしている。息があった取引先です。彼らは信用してパターンを出していますから、僕らも新しい縫製の方法を編み出したら隠さない。僕たちは常に早く、きれいに作りたい。そういう方法は社員が考え出す。実に簡単なことでも、思いつかないことがある。現場にこそ解ありです。
流し方は、一枚流しがいいに決まっているが、バランス的にうちでは無理。三枚から五枚ぐらいの流しがちょうど合っている。組み立てのグループが欲しい時間に先行班が作ったものを渡すジャスト・イン・タイム方式で、先行班も連動している。普通は先にドンと作っているが、うちは違う。また、先行班には優秀な人しか入れない。先行班はグループのリーダー経験者が多く、先上げもサンプルもやる。裁断と縫製の中継ぎ役として、裁断が間に合わないと裁断を手伝い、縫製が大変だと縫製に手伝いに行きます。
アパレル機能で仕事の幅を
今後のイメージはアパレル化です。アパレルと同等の商スタイルではかなうはずがない。そうではなく技術論的に、イタリアと真っ向勝負というスタイルでいかないと。工場がアパレルの機能をもち仕事の幅が広げていく。パターンと縫製の両方を持つことで、わからなかったことがわかるようになった。政府の自立化事業にも関わっていますが、布帛は全部うちが担当。パターンは岩井正博氏に平面製図を教えてもらいレベルが一ランク上がったが、やればやるほど奥が深い。
基本的にアパレル化への道ということですが、もっと単純な言葉で言うと、自分たちで仕事を作り出せる会社にする。せめて無いと言われた時ぐらいは、自分達で作り出さないと。今はいい時代ではないので、仕事が少しでもないとすぐにだめになる。自分達の力で仕事を作り出せるようにしていれば、会社の体質が強くなるし、そういう基盤を作るためのパターン、企画などの付随する能力をつけることでファッション業界の一員としての位置づけが変わってきます。
JUKIからのメッセージ
ファッションしらいし様は”創業以来20年間徹底してもの作りをしてきた会社”そんな印象を受けました。社内での教育制度や工場がパターンを作り、縫製をするという方針など、白石社長の服作りに対する考えや努力が高いクオリティーの製品を生み出す現場の原動力になっていると思います。自分達の仕事は自分達で作るという発想も優れた技術力の裏付けがあるからだと思います。
JUKIは工業用ミシンのもの作りという点でファッションしらいし様と同様に、常にお客様に満足いただける製品やサービスをご提供するように心がけております。
今年は大阪に於いて国際ミシンショー『JIAM2005』が開催されます。是非ご来場いただき、気軽にご相談いただければと思います。
私達JUKI販売株式会社は国内のユーザー・ディーラー様のご提案、問題にきめ細かくサポート対応する為、全社一丸となって頑張っております。 また、JUKIグループのスタッフ一同もお客様のソフト・ハードのご相談に乗れるよう、心よりお待ち申し上げておりますので宜しくお願いいたします。