次世代のモノ作りに挑戦 第29回
株式会社三和ドレス 代表取締役社長 大沢 貴規 氏

「モノづくりは人づくり」の理念を掲げ
技能五輪を柱に若手技術者を育成

岩手県にある三和ドレス(大沢貴規社長)は、二戸工場(二戸市)と盛岡工場(盛岡市)の2工場で高級婦人服を生産しています。「モノづくりは人づくり」という創業以来変わらぬ企業精神を掲げ、技能五輪への挑戦などで若手技術者を育成してきたのが大きな特色です。5年前から二戸工場ではデザイナーブランドを手掛けるのに当たって、JUKIがサポートして最新の本縫いミシン、ロックミシンなどを立ち作業に切り替えました。また、岩手県の北部には縫製工場が集積し、「一般社団法人北いわてアパレル産業振興会」が活動していますが、大沢社長が昨年から会長を務めています。二戸工場を中心にした同社の現状や同振興会の取り組みをお聞きしました。

―大沢社長は2代目として会社を引き継がれています

三和ドレスは父であり現会長(孫藏氏)が1966年に東京・練馬区で創業したのがスタート。会長は二戸市出身で岩手県人の勤勉さを好み、創業当時から県内出身者を採用していました。そんなことから1978年に誘致企業として二戸工場を開設し、次いで盛岡工場を設けた。1985年には二戸工場に隣接して企業内保育所を開き、社員が子育てと仕事の両立を図れるようにしたんです。中には保育所の出身者が成人し、親子2代で仕事に従事するケースもありました。私は25歳の時に岩手県に来て、ちょうど今50歳。2015年10月に社長に就任しました。二戸工場は東北新幹線の盛岡以北の延伸に伴う区画整理により、2001年に移転・改修しました。東北新幹線の二戸駅から歩いて2分たらずの〝新幹線駅に近い縫製工場〟です。

―現在は

二戸工場が51人、盛岡工場が45人の総勢69人で、すべて日本人です。振興会の中で外国人実習生を受け入れている企業は17社中9社で、日本人だけの工場も半数あります。昨年までは人数が減りながらも高校新卒者を採用してきましたが、今春は初めてゼロだった。コロナ禍で採用活動を自粛せざるを得ない部分があったことも影響しているんですが、少子化と高学歴化が著しく、地方でも高校を出るとほとんど進学します。だから企業の魅力を伝え、待遇面でアピールしないとなかなか採用に結びつきません。以前は両工場ともブラックフォーマルを生産していました。盛岡工場は今でもブラックフォーマル専門ですが、二戸工場はデザイナーブランドを手掛けています。コロナ禍の5年前からデザイナーブランドと縁ができ、二戸工場全体でやり出して2年半になります。

5年前から立ちミシン作業に切り替えた二戸工場

―技能五輪を中心とした人材育成によって、取引先からも技術力を評価されています

技能五輪全国大会に参加するため、技能検定は婦人子供注文服製作作業を受検しています。注文服の方が1着丸縫いを覚えることに役立ちますし、針も使えるようになります。ブラックフォーマルはボタンホールが玉縁仕様だったりします。ポケットの玉縁は機械で対応できますが、ボタンホールは裁ちばさみで切って、手まつりしかありません。2001年から本格的に技能五輪全国大会に挑戦し、22年まで連続出場してきました。前年に岩手県代表として出場した先輩が後輩に教えていく教育の仕組みも確立し、現在も続いています。これまで派遣選手は延べ52人に及び、金賞2人、銀賞8人、銅賞7人、敢闘賞15人の受賞者を輩出。第42回の岩手大会、56回の沖縄大会の2大会では「金・銀・銅」を独占しました。2年に1回開催の技能五輪世界大会も2009年の第40回カナダ・カルガリー大会19年の第45回ロシア・カザン大会の2度出場し、ともに8位に入賞しました。今年度の技能五輪全国大会にも2人が挑戦します。技能五輪出場者のうち多くが残っています。長く技能五輪を柱にした人材育成を続け、アパレルやデザイナーブランドの方々から丁寧なモノ作りをしていると高い評価をいただきます。また、今は企業として有給休暇の取得率向上が避けて通れませんが、それができるのは技能五輪などによって1人で丸縫いできる技術者を育成、多能工化してきたからで、これがわが社の強みだと思います。

JUKI製で立ちミシンに

―二戸工場はデザイナーブランドを手掛けるに当たって立ちミシンに切り替えたそうですね

多能工でみんながいろいろな作業をする現場になっていますので、一部の特殊ミシンは座りのままですが、基本的な本縫い、ロック、アイロンは一律立って作業しています。生産しているデザイナーブランドの製品は大きなパーツを取り扱わなければならず、立って作業すると可動域が広がり、長い距離を縫うのにもやりやすいというメリットがあります。それで立ちミシンを導入することに決めたのですが、JUKIさんには立ちミシン専用の純正ペダルが揃っていたし、ロックミシンも頭部がテーブルに入り込む全沈テーブルがありました。ダイレクトドライブ高速本縫い自動糸切りソーイングシステム『9000C』4台を取り入れたのをはじめ、セミドライヘッド高速オーバーロック『MO‐6700DA』などを導入し徐々にミシンを切り替え、一昨年は高速電子眠り穴かがりソーイングシステム『LBH‐1790AN』、昨年は9000C7台とダイレクトドライブ高速1本針本縫い自動糸切りミシン『8000A』5台、高速電子単環根巻きボタン付けミシン『AMB‐289』を採用しています。

ロックミシンもJUKI純正の全沈テーブルを採用して立ち作業に

―北いわてアパレルアパレル産業振興会の会長も務めています

振興会は二戸市・久慈市を中心とした岩手県の北部に集積する優れた技術力を誇る縫製工場が、イメージアップや取引先拡大を目的として企業を越えた連携を強めようと集まったもので、2015年5月に結成しました。初代会長は岩手モリヤの森奥信孝社長が務め、昨年5月から会長を引き継ぎました。これまで学生デザインファッションショー、仕立て屋女子会、イワテメイドアパレルプロジェクトや、オール岩手の取り組みとしてビジネスマッチングなどの事業を行ってきました。振興会は我々北いわての工場の認知度を高めるのが一番の目的でしたが、次のステップとして今後はインターンシップ事業に力を入れ、若い人材を業界に呼び込んでいきます23年度から会員のう14社が参加して事業を始め、すでに30人を受け入れました。県はもとより市町村とも連携し、成果を出していければと期待しています。

高速電子眠り穴かがりソーイングシステム「LBH‐1790AN」を導入

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