服作りCOMMUNICATION Vol.12
地元・川俣(福島県)に根付き、夢紡ぐ
古関株式会社(コセキコーポレーション) 社長 古関 裕美氏
会社設立は昭和八年二月ですが、祖父の古関陽一が戦前、注文洋服屋である古関洋服店を作ったのが始まりです。私は四代目。今はスクールユニフォームとビジネスユニフォームなどを生産しています。
学校関係は二月、三月は特に忙しく、今は地獄の三月です。年間カレンダーがあり、変形労働時間制のもと週四十時間労働を基本に、年間休日百十日を振り分けるという形です。 学生服は詰め襟でもストライプの柄だったり、比翼仕立てやサイド・ベンツがついていたり、ブレザーはデザイナーブランドがあったりで多様化しています。詰め襟とブレザーの比率は三対七くらいでしょうか。
今後の受注面や営業に関しては、夢はあります。川俣(福島県)は絹織物で栄えた町です。今はいいものを織っている機屋さんは片手ぐらいしか残っていませんが、私自身川俣の絹を使って何かを作りたいという夢があります。企業の発展は地元の繁栄をなくしてはありえないので、別の事業としてやりたいというのが夢です。
制服に関しては今まで通りで、こちらから営業を仕掛けるということは考えていません。ただ、ホームページのセーラー服の通販を見て依頼があったり、面白いところでは、コスプレの制服の衣装の依頼があります。他には制服のない学校だが制服のような物が着たいからと「なんちゃって制服」の依頼もあります。
工場としては、生産性の向上、品質アップへの取り組みは欠かせません。この間、二度ほど工賃の引き下げはありましたが、生産性を上げることで対応しました。
最初のCADは平成二年頃入れました。今年一月と二月にパターンーオーダーシステムのソフトと新しいCADとCAM、新型延反機を増設しました。設計から裁断までの合理化はかなり進んできました。
ミシンについては、難易度の高い工程に対する機械に期待しています。例えば、ラペル周辺と袖付けなどは目立つところで、袖付けはいちばん難しいところです。うちの場合、熟練者が袖付けも手でやったり、脇で調節したり、指で送って勘で作業をしています。その人が休んだ時のことも考えて、経験がそう長くない人や新人でも扱えるミシンには関心がありますね。
従業員は、社員とパートで五十人。忙しい時だけの臨時アルバイトと登録社員がいます。登録社員は、昔うちにいた人とか、家庭の事情でフルタイムでは働けず辞めた人で、技術がある人に登録してもらい、必要な時だけ来てもらいます。中国人研修生については、コストダウン、即戦力の面から考えたこともあり、中国にも行ったのですが、純国産でいこうと決めました。
今、アドバイザーの指導を受けて取り組んでいるのは、TPM(トータル・プロダクティブ・メンテナンス)という自主保全活動です。一週間に一時間ほど、仕事を止めて、ある設備を選んで、普段あけない部分まで自分達が出来る範囲で分解し、ゴミ、ホコリを取り、油交換をする。糸切れロスをなくして、生産性を上げるという活動です。ミシンだけではなくアイロン、アイロン台も設備点検をします。一時間に十回くらい糸が切れていたのが、糸切れゼロになったとか。蒸気もれでバキューム台が漏電してショートしていたのが、漏電ゼロ化したとか、効果が上がっています。
ミシンが動いている時だけお金になると言われていますが、自分の設備は自分で守る。「私と機械」ではなくて、「私の機械」になるようにという指導を受けています。一度に5S全ては出来ないので、糸くずを床に落とさない、ミシンにボックスをつけて糸くずを中に捨てるとか、2Sの整理・整頓に力を入れています。
パターンと縫製を更に追究
更なる品質のアップ、服としての出来栄えを良くするには、縫製はもとより、パターンの研究が欠かせません。今のような忙しい時期はやれませんが、就業後の五時以降、三十分か一時間くらいで、縫い方などの勉強会を行っています。多能工を育てるためです。今は女子のブレザーでも、袖山のふくらみとか女性らしいシルエットが求められてきています。それに合わせたパットの付け方、アイロンのかけ方、仕上げプレスの仕方が必要です。
私は学校で三年間、パターンの勉強をし、福島に戻ってきて、オートクチュールの店に入ってアトリエにいました。いろいろなデザインでパターンの展開の仕方とか、ボタンホールまで手でかがるような手作りの服作りを経験しました。それが今、役に立っています。
出来上がったパターンをもらっても、マスターを作る人自体が、縫い方など考えてないパターンがあります。この縫い代の付け方では縫えない、こう付けたら縫いやすいということが工場側にはある。今は、パターンがわかるのは私一人ですが、パターン作成からできる工場にしていきたいですね。
JUKIからのメッセージ
地域密着型で全力サポート
昨年10月に新潟CCから福島CCに赴任して来ました。今回、小関さんを訪問させて頂き大変驚きました。車から降りると綺麗な工場が目に入りました。工場内に入ると全員お揃いの明るいユニホームで、従業員の方々の目も輝いて生き生きとしていました。
古関社長にお話しをうかがうと、週に1回は作業時間を割いてミシン、ボイラーなどの勉強会と点検を行っているとの事。「自分が使うものは自分で手入れする」。この気持ちが良い製品を作る上で生きていると思います。国内での モノ作り「メイド・イン・ジャパン」の感性もここから生まれているのではないでしょうか。
JUKI販売㈱では6月頃に昨年同様、第二回目の展示会(個展)を実施します
今回はダイレクトドライブ、ドライヘッドミシンをはじめ、先月発売になったマルチプログラム装置付袖付けミシンDP-2100も展示します。お客様に持参して頂いた素材で実際に縫って頂き、素材対応力、品質の向上性、生産性等をご確認いただきたいと考えております。ご来場をお待ちしております。JUKI販売㈱ではお客様のご要望にお答えし、お役に立ちたいと思います。ご相談はご遠慮なくお申し付け下さい。
今後ともJUKI販売並びにJUKIグループを宜しくお願いいたします。