次世代のモノ作りに挑戦 第26回
株式会社福新ドレス 代表取締役 吉田 浩 氏

「メイド・イン東京」でプレタを生産
パタンナーとの信頼関係でモノ作り

福新ドレスは、東京都板橋区大谷口上町の閑静な住宅街にある都内の婦人服工場です。1965年9月に現在の吉田昌二会長が創業、吉田浩社長は2代目で今年58歳。取引先アパレルにパターンや仕様などモノ作りの提案ができる信頼関係を作り上げ、「メイド・イン東京」のプレタ商品を手掛けています。時間があればできる限り百貨店などの売り場も回っています。工場では毎年日本人の専門学校や大学の新卒者を採用しながら、一方で中国やベトナムの実習生を受け入れてきました。CAD/CAMを導入するとともに、縫製現場はJUKIの製品が支えています。東京婦人子供服縫製工業組合の副理事長も務める吉田社長にお話をうかがいました。

東京・板橋区の閑静な住宅街にある福新ドレスの縫製現場

―2代目として経営を継承しています

経営を引き継いで12年目です。今は人員は20人です。新型コロナ以前は26、7人でしたが、実習生が入ってこなくなり、正社員が寿退社したのが理由です。実習生は今年5月末にベトナムから3人受け入れ、技能実習3号の中国人が1人のほか、1号の中国人2人が待機中。中国人の受け入れはこれが最後で、以降はベトナム人にします。以前は新卒者を5~8人くらい毎年採っていたんです。でも、1年ほどで辞めるとすべて持ち出しになってしまうので、ある時期から外国人を受け入れ、かつ国内の専門学校や大学の新卒者を毎年1人か2人採用しているのが現状です。縫製現場は30着前後の小ロット対応のプレタラインが3人、プレタでも350~400着のバルク対応ラインが5人です。

―国内工場は忙しさが続いています

コロナ禍でも取引先からは以前の6、7割の仕事を出すと言われたんですが、所属している縫製工業組合で受けた医療用ガウンもやらなければいけない立場だったので、6割くらいを医療用ガウンにして、残り4割でアパレルさんの仕事をこなしていたというのが実情です。昨年暮れの23年春夏向け受注会あたりからプレタでもロットが大きいバルクのゾーンの受注が戻り、小ロットのプレタは22年秋冬商品からマックスになっています。

―手掛けている商品や取引先は

生産アイテムはワンピース、ジャケットがメインです。以前の26、7人当時は日産120着でしたが、現在は半分強ですね。取引先は東京と北九州のプレタアパレルさんと、パリコレにも参加しているデザイナーブランドさんが主力です。そのほかショップと直接の取引で、お受験服を当社で企画、生産しています。また妻の出身地である沖縄県石垣市の「八重山みんさー織」とタイアップし、ファクトリーブランドでブルゾンジャケットとパンツを開発し、石垣市のふるさと納税の返礼品にもアップされています。

―貴社の特色や強味は

一つはCAD/CAMを導入し、小ロットに対応できること。二つ目は今はみなさんがあまりやりたがらないベロアやベルベットを普通に縫っていることですね。プレタの小ロットラインでは8月下旬からベロアの商品が一気に動き出し、3カ月間くらいは続きます。ベロア、ベルベットと布帛を絡ませたり、ニットとベロア、サテンとベロア、プリーツとベロアの組み合わせ商品を手掛けます。「玉取り」と呼んでいますが、伸びない生地のサテンでベロアの裾や、サテンでアウトポケットの周りをパイピング落としミシン始末したりします。こうしたベロアやベルベットは素材自体の取り扱いが難しいし、仕様も凝ったものが多く、ブラウスやスカートの専門工場でも嫌がられたり断られるので、自然とボトムもブラウスもすべて入ってくるんです。

ほかではできないベロアやベルベットと異素材コラボの商品も手掛ける

―取引先のパタンナーさんとのコミュニケーションを大切にしているそうですね

ベロアでもいろいろな素材があり、取引先の1社からは展示会に掛ける前に呼ばれ、一括仕様面を全部見直してくれと言われて、パタンナーさんたちと一緒に検討しました。サンプルはどんなことをしても1着できますが、量産はきれいに見えて、すっきり上がって、手を掛けない方が一番いいんです。ベロアは普通の素材のようにアイロンを掛けられません。だから、デザイン線を変えるわけではなく、仕様を見直すお手伝いをしてきました。都内のアパレルさんでも新しい品番の時には生地屋さんや付属屋さんと同様に毎日顔を出します。CADもボクが紹介したシステムを導入されているので、パターンの相談に乗っています。後ろに変なシワができるんだけどパターン上で対応できますかと言われ、会社に戻ってパターンを見直し、サンプルを作ります。パタンナーさんたちとの信頼関係があるので気軽に依頼されるのだと思っています。

―売り場もよく回られているそうですが、コロナ明け後に変化はありますか

例えばコロナ前は週に1回売り場の構成を変えていたのが、今は2週間に3回または3回半くらいレイアウトを更新されています。売れているものを少しでもお客さんの目の届くところに持って行ったりということが激しいですね。ここに来て生地も付属も加工賃も上がり、といって下代をできるだけ上げないようにされているので、店頭の消化率が悪いと利幅が悪くなるんです。だから消化率に対してみなさん相当にシビアです。工場側もその辺の理解をちゃんとしないといけない。ただ作って納品すればいいというのは、もう終わった。やはり共存していけるような位置関係であることが重要です。

 「8000A」は中肉~厚物に最適

―最後になりますが、縫製現場ではJUKIのミシンを多く使用されています

特殊ミシンを除き8、9割がJUKIさんです。ボクも縫いますが、最近入れ替えた本縫いミシン(ダイレクトドライブ高速一本針本縫い自動糸切りミシン「DDL‐8000A」)は中肉から厚物の素材に関しては抜群の効力を発揮しますね。それとJUKIさんのミシンで優れているのは上下送りミシン。うちではベルベットとニットやサテンという異素材のコラボを手掛けるプレタラインで、この上下送りを使っています。能率ときれいさを追求するには上下送りがベストと思います。

中肉から厚物素材には最適と評価される「DDL‐8000A」

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