服作りCOMMUNICATION Vol.5
国内工場で店頭に即したモノ作り
株式会社アーテス 代表取締役社長 南木 健利氏
中国をはじめ海外でのモノ作りのレベルが年々高まる中で、国内の工場はその隙間を突いていくしか生き残る道はありません。「すき間産業」である国内工場に今求められるのは、店頭に即したモノ作りです。
私自身、アパレルで営業を担当し、SPA型の店頭を担当しました。その経験から言えば、「今日あればこれだけ売れる。明日になったら売れない」ということが実際にありました。一年のスケジュールの中で、ある時は早く、ある時はゆっくり。時間は決して平坦に流れないということを実感しました。だから、二週間、三週間納期遅れをしても、そんなものはいいよ、と店頭で思う時もあれば、半日でも欲しい時がある。それだけ時間の価値が違うわけです。
アパレルから帰ってすぐ、91年に函館工場を立ち上げるときに、「売り場でしっかり売れるものを、売れる量だけ作る」というマーケティングの基本をモノ作りに取り入れたいと考えました。その際、量も重視したのが「テースト」と「時間」でした。本当に売れるものを真剣に考えている人たちと、同じ目線で作れる人間で物を作る。設計図、仕様書、型紙があって物を作るという点では同じでも、そこに隠されているものがテーストに表れている。それを少しでも理解できる人間に物を作らせたかった。それには、消費地でもあり、ある程度文化を感じられる場所でなければなりません。そんな思いで作ったのが函館工場です。従業員にやさしい工場ということで、ミシンには集塵装置を付け、今では当たり前かも知れませんが、床暖房にして、彼女たちが家にいるより快適な環境を作りたかった。工場も町中にし、都市型のアーバンファクトリーと呼んで立ち上げたわけです。従業員も全くの素人でスタートし、苦労しながら十年間やってきましたが、それなりに存続できたのは、やはり消費者の方を見てモノ作りをしてきたことが良かったと思っています。
当社は南木メリヤス工業として1958年(昭和33年)に創業し、地方の工場は64年に栃木工場、74年に秋田工場を建設しました。それぞれ工場の特色があり、いちばん歴史が古い栃木工場は、本社から一時間半で行けるという立地を利用して、小売店向けの小さなロットのものをやっています。秋田は何でも来いの工場で、何かあったときには秋田で実験します。店頭ということを考えたら、カットソーの素材でいろんなアイテムが全部カバーできないと店頭に即した工場とは言えない。この何でも縫えるという条件が中国との差別化で非常に大きい。幅広く何でもチャレンジするというのは全工場に共通していますが、その先兵になっているのが秋田です。
テーストと時間で日本に優位性
我々は、おしゃれに暮らしたい人に対して、それぞれの場面を洋服で表現したいと思っています。当社は企画部門をもっているわけではないので、そういう志を持っている人たちと組んで、そこの製造部門を請け負いたい。実際、中国を見てもいいものが出来るようになっています。だけど本質的な部分でまだ、彼らは洋服の文化という意味ではそこまで行っていない。日本の特殊性を考えた場合に、日本人に本当に満足していただけるというのは、我々でないと難しいのではないかと思う。その中には、物の品質もあるし、テーストや最も大事な時間がある。確かに納期も短くなっていますが、日本で流れている時間と中国で流れている時間は全然違う。それは空気が違うからです。この空気を大切にできるのは我々しかいないと思っています。そこが私が国内生産にこだわる大きな根拠です。
最近、製造業の企画提案が言われていますが、事はそれほど簡単ではない。私たちがデザインしたものが簡単に売れるのだったら、アパレルはつぶれない。今の私の役目は、しっかりとした工場の生産背景を持って、その工業的な部分から出てくる企画提案です。例えば、カットソーの特にカジュアル系のアイテムに関してのパターン。これは日本はとても遅れている。あと素材の特性を生かして、布帛であればダーツを取るところを縫いのテクニックで曲線を表したりできる。また、布帛、ニット、カットソーといった垣根があるのは日本だけのようですが、もっと自由にいろんなことが出来るはずです。これは間違いなく、現場を持っていないと出来ないし、素材を触っていないと出来ない。そういうチャレンジをして、アパレルの人たちが何かやりたいのに、どうしていいのか分からないというところに対して、我々がヒントを出せるような関係をさらに強固に築いていきたいと思います。
JUKIからのメッセージ
「STJ」が国内のユーザーを支援
国内のアパレルに見られる、2プライス化の流れにより、弊社の取り扱っている商品群の引き合い状況も、より付加価値の高い商品造りにお役立ちできる商品(ミシン)に集中致しております。
JIAM2002大阪で御覧頂いた商品も昨年末より市場展開させて頂いており、本年も更にラインアップをしていく予定でおります。
JUKI㈱の日本国内販売会社として私どもJUKI販売㈱は、JUKIのブランドを軸にあらゆるユーザー様に満足頂けるサービスを御提供するべく日々活動致しております。昨年よりユーザーセールス部門の店舗名を『STJ』に統一し、名称を変更させて頂きました。日本のお客様の「縫い」の創造、開発のお手伝いをさせて頂きたい。すなわち、「Sewing Tchnology from Japan(縫製技術-日本発-)等々の願いを込めての店舗ブランド名称でございます。
日本全国二百店舗に及ぶ弊社契約代理店様と共に、国内のアパレル生産現場からのご要望に応えてまいります。
今後ともJUKIグループをあげて、世界最高位の総合品質を変わることなく追求し、全国へとお届けさせて頂きますので宜しくお願い申し上げます。