服作り新時代 Vol.7
新たな地平へ中国合弁工場
-トヨタの国ははずせない-
サンテイグループ サンティクス 代表取締役 常川雅通氏

サンテイグループは、中国に合弁が10工場、ベトナムに1工場です。日本は残っているという言い方は正確にはできないが、中国でパーツを作って、合法的にメード・イン・ジャパンを組み立てるという機能があり、ワーカーさえ確保出来れば、いつでも再開できるようにはなっています。グループ全体の縫製人員は8千人規模。これをサンティクス、サンドラ、サンエヌ、サンタイの四つの営業会社が活用しています。このうちサンティクスが売り上げの半分くらいはほぼカバーしていて、従業員も8千人のうち5千人。日本人も一番多いです。

我々は、まだ出来ていないアイテムがたくさんあります。新しいアイテムを新たに起こそうと思うと、工場を中国の中で広げるよりはベトナムでやった方が良いという気がします。ベトナムには一つ足がかりがありますから。ただ、ここにきて中国も結構落ち着いています。沿岸地域は確かに人は動いています。しかし、うちの場合は内陸部で特殊かもしれないが、18年目とか15年目の工場なので、20歳で入った人たちが今40前くらい。昔からいる従業員は動かない。若い人が入ってくるので平均年齢は低いですが、日本の縫製工場で一番多く見られる日本型に近い年齢層です。

日系工場としての生き残り戦略ということでは、モノ作りに対する考え方の多様化を行っています。例えばサンドラがやっている上海にあるパンツ工場は、世界に出しても恥ずかしくないパンツを作ろうと企てています。パンツは奥が深い。もしかしたらスーツより深いかもしれない。やはりイタリアかなと、今イタリアの技術を直輸入しています。

一方、中国工場の維持ということで、ハンドメードをやってきたが、少し違うのではないかと。去年まとめ作業を機械化しようと、JUKIさんとそればかり打ち合わせをしました。中国サイドでも人件費の高騰が顕著ですから、機械化が必至です。我々が目指す機械化は簡素化ではありません。手でやるような味、テーストが手に近いものを導入しています。ですから、うちの会社でブームなのは、サンドラがパンツでいかに手を加えられるかという攻防をしているのと、いかに手を機械に変えようかという、この二つです。

サンティクスは自社企画が半分です。素材、デザイン、パターン、モノ作りは全てこちらでやり製品売りです。製品売りと言っても工場なので、全て買い取りです。利幅を取っての商売ではないので、OEMみたいなものですが、自分の所で企画している。アパレルさんは通さず、ダイレクトに小売店さん。SPAと言えども専門的な方が少なく、こちらがケアをしています。

自社企画に踏み切ったのは98年に分社化してからです。その頃、取引先のアパレルが次々とおかしくなり、取引先の残った人に集まってもらい、条件付きで仕方なく始めたわけです。自社企画に必要な機能は、やはり企画力です。素材とデザイン、パターン。企画の人材は、まず洋服が好きであること。デザイナーでもパタンナーでも、外部からの中途採用ではうちの工場では全く意味がないです。何故かと言うと、機械がわからずパターンを引いてもだめです。人も自前で作らないとだめだと気づき、ファッション学校卒の洋服が好きな人たちを工場に三年間行かせる。実際に工程の中に入り、うちにいる技術者のサポートをする。たまには自分で線を引き、裁断して縫製したりする。現場に入らないとわからない。僕も東京の学校を卒業後、鹿児島の鹿屋工場に一年半、根占ではジャケットとコート工場に二年いました。働いている人たちの気持ちもわかりますし、この経験が今のモノ作りに一番生きています。

ファミリー経営のため、従業員に対しての雇用の目線は、この人たちと家族づきあいができるかどうかです。彼らの一生は、我々経営者の采配にかかっています。本当に腹割って話せるのか。いいものが双方で生まれるかということが目安になります。

販売先は日本市場向けが圧倒的です。他は10パーセントも行っていません。今後は増やしていくつもりで、英国とサンプルのやりとりも始まり、実際オーダーも入ってきています。相手先は中国のモノ作りを3、4年前やったのですが、納期も品質もめちゃくちゃ。辿り着いたのが当社。やはりトヨタの国ははずせないと。日本人の服のモノ作りに対してイタリア人は見向きもしませんが、イギリス人は注目しています。英国の中で作れないので、高級なものはイタリアに発注するがイタリアのクラシコとは味が違う。探しているブリティッシュは日本だった、日本が一番近いと。今まで日本の工場を一生懸命守っていらっしゃった方が、勝ち組になる時が来るかもしれません。一つのポイントはワーカーです。これが今一番の注目ではないですか。

我々はいま、イタリアでもモノを作っています。中国、ベトナム、それに日本が復活しワーカーが来れば4拠点。自分たちがコントロールできるツールがあれば、面白い展開が出来るかも知れません。

企画・営業の中枢・サンティクスの本社(岐阜県関市)

JUKI顧客満足宣言
お客様の声で商品開発

JUKI工業用ミシン事業部 商品企画部長 鈴木一郎

 

JUKIのコーポレートスローガンは「Mind&Technology」と「お客様第一主義」です。

我々は新たな機能を付加したり、性能を高めた新製品を開発していますが、優れた機能であってもお客様が使いこなせなければ意味がありません。新製品開発ではお客様の抱えている問題やニーズを解決し、生産性・品質ともご満足いただける製品を追求していかなければならないと考えています。
 顧客満足(CS)はお客様の評価ですので、お客様の立場に立って求めているニーズ情報を収集分析することから始め、PMT(プロダクトマネジメントチーム)により新製品開発から販売までの全プロセスを部門横断的にマネジメントし、よい製品をより速く提供すべく開発を進めています。
 現在、新製品の開発ではお客様の意見をいただき、設計に反映し、試作品の市場評価をもとにお互いに納得いくまで何度もお客様とキャッチボールし、製品の付加価値を高めています。

このような取り組みで開発された例として電子本縫い袖付けミシンDP-2100があります。このミシンはイタリアの大手アパレルメーカーと開発段階から取り組み、現場のオペレーターさんが納得するまで改良を重ねたものです。この結果、JUKI独自の左右独立上送りベルト駆動方式を採用し、最高品質と評価されるミシンを開発できました。
電子単環根巻きボタン付けミシンAMB-289はボタン付けと根巻きが1サイクルで縫製でき、サイクルタイムを短縮し生産性を向上しました。
糸調子のデジタル制御(アクティブテンション)を採用したサイクルマシンでは縫い品質の向上、調整の容易化を図ることが出来ました。いずれもJUKIのヒット商品となっています。

また、現在発売中のMO-6700やMF-7700、7800シリーズにおいても市場でのお客様の声を聞き、改良・改善を繰り返してきました。こういった取り組みがニット機器に関しても評価され、今まで他社ミシンを購入いただいていた大手のユーザー様からも商談の機会をいただけるようになりました。

これもお客様の声に徹底的に対応し、全社一丸となって進めてきたCSの成果と考えております。

5月のケルン展(IMB)で関心を集めた本縫い自動玉縁機「APW-895」

導入事例一覧に戻る