服作り新時代 Vol.9
社会的要請で生まれた「レップ」
セールスレップネットワーク 社長 坂本正志氏

市場と製造現場を結ぶ

セールスレップの仕組みは、社会的な動きの中で必要とされて出てきたものです。日本で今後起きるような社会現象を踏まえて問題を直視していくと、従来の仕組みでは無理、という結論がありましたから、それならどうするという仮説―こういう答もあるということを業界に訴えてきました。もともと平成八年に江尻弘さんが業界専門紙に書かれた論文で、米国のアパレル製造業が採用している代理商方式を紹介され、特に日本型QRでアパレル製造業が直面する小ロット、期近、クイック生産による安定操業が出来なくなることへの対応策として有効、かつ「QRの死活制するカギ」と、セールスレップの導入を提唱された。これが、日本における「レップ」という言葉の始まりです。戦後、アパレル方式を採るのか、欧米型のレップ方式を採るのか、という選択の時期に、日本の場合は、まだ商品も成熟しておらず、大量生産を仕掛けていくには、アパレル方式が良いということで、国がその育成に関して応援した。百貨店も委託制度で繁栄したし、戦後五十年は非常に良かった。ただし50年を経て、バブル期以降はこの仕組みは全く機能しなくなった。このことを見据えてやったのが僕らの仕組みです。これまでの仕組み、特に繊維の場合は卸を経てからは急激に値段が上がる。返品制度や値引き、歩引き、さらにいろんな段階を経る中での事務的コスト、物流コストなどで値段が上がるわけです。 
こうした中、原価率が20パーセントを割って当たり前という恐ろしいことになっています。つい20年前までは30パーセント台でした。中国で作るから、ということですが、たった20年でそんなに変わっていいのか。確かに今は、中国でも5、600ロットにすれば製造してくれる。製造業の人が恐れているのが、売れるようになったら、結局量産は中国に行くということ。すごい製品を開発した途端、海外に持って行かれるかもしれない。その製造技術のアイデアを生かしてやるためには、自分たちで販売ルートを確立する必要があります。市場と物作りというのは二人三脚です。
社会は工業社会から情報化社会、さらに創造化社会に移行します。モノ作りがこれから可能性を見せる時です。情報化はインターネットの社会で、こういうものが売れるという情報をもとに早く作れば実現できるが、創造化はそんなものではない。いま売り場は同質化が進んでいます。また、東京も地方も同じというおかしな状況です。我々の仕事は地方とすごく絡んでおり、セールスレップはこれまでのルートセールスと違ってエリアマーケティング。私どもの会社の場合、京阪神を中心とした西日本がエリアで、市場と製造現場を結びつけようというものです。決して東京志向ではない。商品ターゲットはレディスの中間プライスから上の高級品が中心。バジェット品を売ろうという発想はなかった。それでは日本に勝ち目はありません。
現状、セールスレップネットワークとの取り組みでビジネスは伸びています。二代目、三代目さんで優秀な人が良い業績を上げています。連携している人で、経営だけやって成功している人はいない。あらゆる面で作ることに関与してきた人の方が直販で成功している。感性の高い、クリアな人ほど、今の仕組みには不満なはず。直販をやっていくと、前のニーズとか読めます。企画能力のあるところ、もしくは特殊技術を持っていて、ここに任せるしかない、というところくらいしか残っていない。そういう工場を探し、もしくはそういう工場を啓蒙して開発していくことが僕らの仕事。この仕組みで行くと、二分の一価格で日本製を売ってやり抜けるということが出来る。地域のブランド化を日本製で観光とからめて進めています。

ポイントは三つ。一つは、特殊技術を持っていること。おいそれと中国にはマネされない技術。第二は、マスカスタムで、一点一点作れるぐらいの設備と技術を持っていること。もう一つは、日本独特の感性。情報化はネタが残り、売れ筋が集中する。結局、売れ残りの山。販売総額の約二2.7倍が供給されていると言われていますが、そうした中、海外の富裕層は、日本で作ったもので、日本のブランドを探している。次は、日本風のものを日本で作ってもらいたいと。そして、韓国好みの日本の製品、中国好みの日本の製品。日本の製造業をそれに対応できるところまで持って行く。

日本はこれから人口構造上、高齢化が進み、体型が急激に変わっていく。体型変化をカバーし、カッコ良く見せる技術やノウハウ。意識的にそこに行けるような能力を今のうちに作ってもらう。そうしたことを年四回行う展示会でお互いに刺激を受けながら磨いていく。小売店は顧客名簿を持ち、細分化された市場のニーズを掴んでいます。小売には買い取りをしてもらい、日本製をいいポジションに置いてもらう。もっとメーカーが強くなれば自分たちが小売を利用するようになってもいい。外国で売れている日本の一部のデザイナーやメーカーの服は日本の技術で裏打ちされたものです。こういうものを集積してジャパンブランドにしていきたいと考えています。

ポイントは三つ。特殊技術を持っていること。マスカスタムで、一点一点作れるぐらいの設備と技術を持っていること。
日本独特の感性。

ニ歩先のCSを目指し

工業用ミシン事業部 営業本部営業推進部長 小西浩樹

 

営業推進部では海外法人や販売会社の窓口として販売促進企画の立案や販売促進活動、ニット及び厚物用ミシンなど重点機種のプロモーション活動、カタログ作成やウェッブサイトの企画運営などを行っています。
JUKIからお客様への直接的なCS活動としては縫製研究所のコンサルタントやセミナー及びプラント設計、営業技術部のミシン保全や設備教育などが代表的ですが、お客様のJUKIに対する要望は地域や時代により様々で、100人のお客さまは100通りの要望があるといえます。また、良いサービスであっても同じ事をやっているだけでは陳腐化し、従来とは違ったサービスや更に高度なサービスを要望されます。
そのため、私共としてはこれらのサービス内容を高めることを考え、異なる要望にもお答えできるようにしていきたいと思います。また、本社で考えたことが実際にお客様と接している担当者が行動できるように進めています。
ある有名なホテルでの話ですが、客室に書類を忘れたお客様がいて、「次の日の会議に使うものだ」と連絡を受け時のことです。その連絡を受けた担当者は個人の裁量で書類を持ってすぐに新幹線で追いかけたということでした。これは究極のCSではないかと思います。

JUKIにおいても第一線の営業マンがCSについてどのように考えているのか、地域や経験によってのばらつきは無いかと調査し、同じレベルになるように進めています。現状ではまだ個人の裁量で行動しようと思っても手続きなどでなかなかやりにくいこともあるようですので、このあたりも変えていきたいと考えています。
JUKIの社員行動指針のひとつに「お客様の立場になって考え、スピーディーに行動する」というものがあります。工業用ミシンは生産財ですので、動かなくなると、工場としてはロスとなってしまいます。CADなどの産業装置は停止した場合の損失が大きいので保守契約も厳しい条件となっていますが、中国にある縫製工場が急遽、縫製品種を切り替えることになり改造のための部品を次の日に持参したことがあります。スピーディーな行動はたとえクレームであってもこれをCSのチャンスとして生かすことも出来ます。
JUKIブランドの信頼性のために、今後とも一歩先を行くサービスを行い、2歩先のCSを考えていきたいと思っています。

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