服作りCOMMUNICATION Vol.6
技術の継承、人材育成の拠点に
イトキン大垣技術研究センター 所長 神田 善夫氏
当社は、中国に十三工場を持つなど生産面、販売面で早い時期からグローバル化を進めてきました。しかし、こうしたグローバル化が進めば進むほど、ジャパニーズ・スタンダードというか、日本の技術をどう残していくかが大きなテーマとなってきました。言い換えると、メード・イン・ジャパンのモノ作りの中から生まれる技術の継承と、そのために必要な人材育成が重要な課題になってきたわけです。
イトキン大垣技術研究センターは、日本のアパレルとして、対米、対ヨーロッパなどに伍して、どう勝ち残っていくかということを長期的な観点から考えた時に、「今やらなければ」という会社の方針から生まれたものです。もともと当センターは、アイ・エフ・エス大垣の名称で、国内で量産機能を持つ唯一の自家工場として運営されてきました。その実績と生産の環境をベースに、国内外の「マザー工場」へ再構築することになったものです。私個人としても、この間五年以上にわたって、中国をはじめベトナム、タイなど東南アジアの国々で技術指導を続けて来ましたが、日本に技術と最低限の生産基盤を残す必要性を痛感していました。喜んで任務に就いた次第です。
センターの目的は三つあります。第一は技術の継承、第二は人材育成、第三はオールアイテム化でプレタの工場にすることです。
まず、第一の技術継承についてですが、国内生産の縮小に伴い、これまで日本で培ってきた技術が無くなってしまうという危機感がありました。しかし、今なら日本国内にある技術を集められる。それを集約して、当センターに残し、体系化しようということです。五年先、十年先を見据えて研究開発を進めようとしており、「メーカーに戻って、一から出直そう」というトップの意思を強く感じます。
そうした技術蓄積、研究開発は実は、量産しているところでしか実現できません。このため、従来のように採算を重視した量産ではなく、会社としての研究開発という「投資」の視点から、現物生産に取り組む中で技術蓄積を行っていくというわけです。技術蓄積も、ハード、ソフト両面で広範にわたります。スポンジング、延反、裁断、縫製、中間プレス、最終プレスまで全部が研究の対象になるし、例えば裁断でも生地の工程収縮などのデータを解析して、放反方法から裁断の仕方まで決めていく。こうした点からも量産することにポイントがあり、量産から生まれた技術をフィードバックしていく。一つの商品の流れから、いろんなオリジナルの部分が出てくるので、それをデジカメで撮って残し、一つずつ増やしていく。そのことがいろんなデザインにも対応できることにつながる。一方、機械もそのままでは使えないので、ここで研究して機械もオリジナルなものにする。アタッチメントの作り方や使い方を含めた機械調整力も重要なテーマです。
以上の技術蓄積を図る上でも、三番目の目的である当センターがフルアイテムを生産出来なければならないことは明らかです。しかも、従来のボトム単品工場からプレタの工場をねらったのは、上から下に落とすのは出来ても、下から上は出来ないからです。
モデリストが育つ環境を生かす
第二の人材育成ですが、まず全社員対象の研修の場としての位置づけ。イトキンが扱っている商品は服だから、営業も企画もすべてがここで服を縫ってもらい、縫製の現場を体験してもらう。生産担当者やパターンメーカーなどは、一週間こちらに来て研修を受けてもらっています。どうしてもパタンナーと工場は別々で、技術と企画の融合が難しいのが現状です。ここで出たいろんな問題をマニュアルにして、本社に情報をフィードバック。サンプルの段階で問題点を解決するためにも、パタンナー自身が現場のことをある程度分かっていることが必要なのです。以前、こうした人たちは、パターンから縫製に至るモノ作りの全工程に通じていました。今後は、中国の現地スタッフにも来てもらい、イトキンの生産のやり方や技術、考え方を教育します。
モデリストの育成もここで行っていきます。モデリストを育てていくためには、工場を持つセンター機能の中に入れてしまわないと無理です。本物のモデリストになるには縫製に十年、パターンに十年、合わせて最低でも二十年はかかります。ここなら量産もサンプルもやるから、モデリストが育つ環境があります。是非、成果を上げたいと思います。
JUKIからのメッセージ
素材、デザイン対応の商品も豊富に
生産拠点が中国へ移転している中、国内生産工場はモノづくりと仕組みつくりを懸命に努力されています。
そうした国内の現場にJUKI販売㈱はハード面だけではなく、ソフト面も含めサポートできる体制で答えたいと思います。
「多様化している素材に、現状の機械では縫い品質が求められない」そんな問題をお持ちのお客様も少なくないと思いますが、その機械にアタッチメントを装着して難素材に対応する提案もその活動の一端です。
世界初のドライヘッドのロックミシンMO-6110D、そして更にグレードアップした高速電子千鳥ミシンLZ-2290A、ピンポイントのMP-200Nも発売になり、多様化していく素材とデザインに対応する商品が豊富になりました。
お客様の縫製されている付加価値の高い商品に対応できる機械のご提供も私たちの使命です。本社での企画開発部門、大田原工場の生産部門そして、販売部門が一体となってお客様の期待に答え、安心感を与えられるよう努力しております。
JUKI販売㈱では相談窓口も開設しました。販売店様と共に直接お客様の声をお聞きして「メードインジャパン」のモノづくりに全力投球で対応させていただきたいと思います。どうぞハード、ソフトともにJUKIをご用命ください。