テクノロジーから
紐解くJUKI
技術は、“モノ-コト”づくりの
原動力。
JUKIがつくるミシンや実装関連装置には、お客様の要望を実現していく中で生み出した多岐にわたる技術が活かされています。
さらには、JUKIが得意とする製品・システムの提供だけでなく、新たなチャレンジ・取り組みを行い、工場そのものをスマートファクトリーにすることで、自動化や脱技能化など、お客様のお困りごとを解決しています。
JUKIのビジネスには、あらゆる技術が結集しています。
製品を支える技術
JUKIのコア技術は、品質を安定させる、使いやすさを追求する、作業性を向上させる、消費電力を削減するなど、製品に直結した技術の数々です。
工業用ミシン・
家庭用ミシン
工業用ミシンは素材・縫製アイテムに適した“風合いの縫い目”を実現することを大前提として開発を行っています。また、「人」が一日中操作する装置のため、ストレスフリーを目指した研究も日々続けています。
家庭用ミシンは、使用者目線での開発をモットーに、JUKIのお客様の特長である本物の道具にこだわるソーイング愛好家を意識した、縫いの確かさと操作性を向上させる開発を行っています。
JUKIが生み出した
さまざまな技術
機械・機構技術
JUKIのミシンならではのさまざまなコア技術
中押え独立駆動
中押え機構を独立したモータで駆動する技術
縫い調子に直接影響する中押えを自由なモーションで作れるようにした技術です。よりきれいで安定した縫い目に調整が可能になります。
生地を押える時間とタイミングがデジタルで調整可能で、生地の浮き上がり抑制や針落ちの安定性向上、目飛び低減に効果があります。
モードを切り替えるとモータ負荷のフィードバックから布の厚みを検出できます。
ドライ技術
潤滑油を最大限微量化
高速回転する工業用ミシンに必要不可欠な潤滑油を最大限微量化・低減し、面部をドライ化した技術です。ミシン稼動に最適な状態を探求したJUKIのオリジナル機構で、針棒には超硬質で部品を傷つけない独自のDLCコーティングを施し、半固体の油「JUKIグリス」を少量使用して磨耗を防ぎます。
鳥の巣防止・残短技術
糸摘み作業をなくし生地裏の縫い品質を向上
縫い始めに糸が鳥の巣状態になるのを防止し、縫い終わりの糸を極限まで短く切断する技術です。縫い始めに上糸を糸掴み装置で捕捉し、これを縫い終わりまでキープします。縫製完了後、通常の糸切り動作の後、残短用のメス機構で縫い終わりの上下糸、縫い始めの上糸を短く切断し、残糸は吸引します。
ボタンホーラー
職業用ミシンでのボタンホール縫製技術
直線縫い専用の職業用ミシンでボタンホール模様を縫製する技術です。コンピューター制御のXY駆動式の採用により、これまでのメカ式ボタンホーラーではできなかった多種のボタンホールを好みの向き、ボリュームで、送り詰まりのない縫製を可能にしています。
完全自動糸掛け(イージースレッダー)
ロックミシンのルーパー糸通しを風の力で
すばやく穴まで通す技術
通し穴に1㎝ほど差し込んだ糸が細いパイプの中を通り、ルーパー穴まで送られる技術です。電動モーターの力でポンプから送られた空気が深さ約0.3㎜の細いスリットを通り、急激に広がることで吸引力を生み、糸を送り出します。糸の摩擦抵抗解消のため、パイプに特殊加工を施しています。
自動糸調子技術
ロックミシンの糸調子を自動で最適に設定する技術
ロックミシンの針糸、ルーパー糸を一針ごとに縫製に必要な糸量を繰り出す糸調子の技術です。押え高さ、メス幅、送りピッチ、縫い目の種類に連動して、繰出す糸量が可変し、最適な糸調子を自動で設定します。
自動糸調子
模様の種類に応じた上糸の張力を実現
家庭用ミシンの上糸の張力を、縫い模様に応じて自動調整する技術です。振り幅、送り量から決定した圧力を、内蔵された縫い模様数351種類と文字模様のそれぞれに対して、上糸に最適な糸張力を与えます。専用のステッピングモーターを搭載することにより、糸調子カムの回転角度をデジタル制御しています。
空環カッター
ボタン操作で安全・簡単に空環をカットする
自動空環カッター技術
家庭用ロックミシンの空環をボタン操作でカットする自動空環カッター技術です。縫製時に邪魔にならない回転刃を採用。また、回転刃に連動する可動式セーフティカバーの動きをセンシングすることで異物を検出し、誤って指などがカッター刃付近にあっても、刃部が直接触れない安全設計としています。
JUKIスマートステッチ
縫いスピードが変化しても一定の縫いピッチを実現
縫う方向を360度自由自在に転換しながら、ステッチ模様を入れるミシンに備わっている技術です。2次元センサを針板の表面に付けたことにより、布が動いた距離を測り、動いた距離に応じて、ミシンの回転数を変動させ、縫いスピードが変化しても一定の縫いピッチを実現します。
ピボット機能
ミシン作動・停止時に合わせた、独自の技術
縫いを一時停止した際に、針が生地に刺さった状態で停止し、押えを少し浮かせる技術です。エンコーダによる検出で生地の厚さに合せ、押えの高さ設定も変更できます。再スタート時は押えが自動で下がり、角縫いやカーブ縫いなどの際に、作業時間を短縮できます。
省エネルギー技術
各種モーターをコントロール・最適化し消費電力を抑制
さまざまなモーターの特徴を生かし、ムダなく最大限のパフォーマンスを発揮するJUKI独自のチューニング技術により、消費電力を最適化する技術です。停止時に電源回路をシャットダウンし、稼動時にはすばやく再稼動させる回路設計など、多くの省エネ技術が集められています。
画像処理技術
プログラムデータとのずれ量を画像処理にて補正
パーフォレーション生地など、柔らかく、伸び縮みする素材に対して、生地の縮み量をカメラで測定し、補正しながら縫製する技術です。生地上の目印となる部分から測定し、プログラムデータとのズレ量を算出・補正し、縫い目を確実に目標とする場所に形成できるため、デザイン性を損なわない縫製ができます。
インターネットの活用
ミシンでインターネットの閲覧を可能にする
JUKI Sewing Net
本体に無線LANを搭載し、インターネットを閲覧できる技術
インターネットを介して、ミシン本体内のソフトウェアのアップデートや、タッチパネル画面上で視覚と音声によるガイダンス(YouTube、Instagramなど)の視聴、取扱説明書のWeb閲覧ができる技術です。
UI/UX
親しみのある操作(UI)、分かりやすい、使いやすい(UX)パネルを実現
スマートフォンと同じ「静電容量方式」のタッチパネルを採用し、画面のタップ、スワイプで直感的に操作ができます。
ユーザーがよく使う機能をまとめて配置し、わかりやすい表示で目的の縫い・操作にすばやくたどりつくことができます。
糸の交換を断つ
下糸の交換を自動化
下糸自動供給
本縫いミシンの下糸を半無限に供給する技術
残糸を除去し、ボビン(下糸を巻き付ける部品)交換を自動で行う技術です。縫製中に釜部、搬送アーム、ボビンセット、残糸除去、糸ほぐし、糸巻き、ノズル、繰り出しの8ステップを一定の間隔で行うことにより、頻繁に発生する下糸交換をなくし、生産を維持できます。
etc...
33年間変わらぬフォルムを継承した「SL-700EX」が、2023年度グッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受賞。
「SL-700EX」は、33年前に発売した職業用ミシン「TL-90」から一度もフォルムを変えることなく、ユーザーに寄り添った機能を開発・追加して進化させてきたミシンです。
アパレルの品質を支える
縫いの技術
季節ごとに新しい素材、新しいデザインが発表されるファッションの世界。
JUKIはミシンを通じて、デザイナーの描くモードを形にし、そして人が身にまとうものだからこそ、着心地や風合いをかなえる「美しい縫い目」を追求し続けています。トップブランドとして、"美しい縫い目"を実現するこだわりの技術の一部をご紹介します。
縫い品質を追求した
新たな技術
美しい縫い目(縫い締まりや縫い形状を均一化)を実現
天秤独立駆動
天秤機構を独立したモータで駆動する技術
縫製中の天秤負荷を検知し、1針ごとの縫い調子を監視する技術です。目飛びや単糸掛けなどが発生したときの天秤負荷を可視化し、良否判定をサポートします。またトレーサビリティ機能としてデータを保存することもできます。
中押え機構との協働によって、縫い始めの目飛びや“鳥の巣”の軽減にも役立ちます。
パーフェクトステッチ
1本針CNCミシンの上下独立駆動および同期制御技術
XYの縫製移動方向に関わらずパーフェクトステッチ縫いを行う技術です。ミシンの針上下と釜を独立して回転させる独立駆動と、針上下とXYを同期させて縫製することでヒッチステッチをなくし、縫い締まりや縫い形状を均一化して美しい縫い目を実現します。
ボックス送り
縫い縮みや布ズレを防止
「四角」を描く送り軌跡にすることで、生地が送り歯に隙間なく接し、生地送りを安定化させた技術です。薄地・厚地の素材もスムーズに送り、極端な段部乗り越え縫いも容易にしています。カムの形状を特異にさせ、水平に送りストンと落とす極端な動きをすることにより、箱のような四角い軌道を実現しました。
布の素材にかかわらず、安定した「縫い目」を実現
アクティブテンション
安定した「縫い」を実現するため、糸の張力を動的に制御
上糸と下糸の張力を絶えず最適化し、美しく安定した縫いを実現する技術です。特殊なソレノイドを電流で微細にコントロールすることで糸調子皿を開閉させ、最良の糸調子を生み出します。厚地・薄地・伸縮などの素材変化による制御、縫いトラブルの防止、模様縫いの制御など、多方面で活用しています。
フロートモード
押え上げ状態を認識する独自技術
押えをわずかに布から浮かした状態で縫うことができる技術です。エンコーダにより押え高さを常に検知することで素材に合わせた0.1㎜単位での設定ができます。生地の間に綿を挟んで縫製する場合などの縫いズレを防止できます。
デジタル制御
プログラムデータとのずれ量を画像処理にて補正
縫い目調整のデジタル化とIoTを活用したデータ転送
送り歯高さ、送りピッチと軌跡、押え圧、上糸のテンションの5つの“縫い目”の調整機能をデジタル化し、数値で記憶できるようにした技術です。調整後のデータは専用アプリを入れたタブレットに記憶させることができ、近距離無線通信NFC機能により、パネルにかざすだけで別のミシンへのデータ転送を可能にしました。
etc...
産業装置
(実装関連装置)
JUKIは、実装関連装置の総合メーカーとして、お客様ニーズを捉えた製品のラインナップや、手挿入や部品の入出庫を自動化する装置など、工場全体のオートメーション化に貢献する各種装置を提供しています。
活用される
さまざまな技術
機械・機構技術
高速・高精度に部品を搭載する技術
プラネットヘッド
回転型ヘッドで、小型部品の高速搭載を実現
部品の吸着・装着がコンパクトな高速搭載を可能にするロータリー技術です。
吸着部品を順次回転させるため、部品認識の効率がよく、タクト短縮につなげることができます。また、吸着順に装着するため、不良発生時の解析がしやすく、ノズル※を増やすことも可能です。
ノズル:部品を吸着&装着する部品のこと
匠ヘッド
部品に応じて、認識高さを可変
搭載する部品の高さに応じてヘッドを固定したままレーザ認識装置のみを上下動させる技術です。部品認識・搭載を最適な高さで行うことができ、高速搭載を実現します。これにより部品の高さに応じたヘッド仕様が1種類となり、高速性と汎用性の両立を実現します。
ヘッド交換
単体機の中で2種類のヘッドを交換する技術
プラネットヘッド(ロータリーヘッド)と匠ヘッド(インラインヘッド)を生産内容に応じて交換できる技術です。生産体系が大きく変わっても容易にフレキシビリティーのあるライン構築ができます。
部品ベリフィケーション(CVS)
生産稼動開始前(マウンタ)に部品の電気特性を検査する技術
生産開始前や部品切れが生じた後の生産再開時に、搭載する部品の電気特性(抵抗値、コンデンサ容量、部品極性)を検査する技術です。外観検査機では判定できない部品検査が行えるため、部品・リールの誤装着を防止することができ、部品の誤搭載を根絶できます。
レーザ認識技術
部品の状態をレイコンマのスピードでビジョン認識
部品吸着前後、搭載前後で部品の状態をビジョン認識
高い分解能をもつフライング認識ユニットをヘッドに装備し、透過光による部品シルエットを読み取ることで、部品の位置と角度を演算する技術です。演算はフライングビジョンによりXY移動中に即座に行うことができ、タクトタイムを高速化できます。
搭載直前までの部品の吸着状態をモニターできるため、吸着、搭載時の部品の有無、正常吸着、正常搭載を確認でき、また搭載後の不良の有無を検知できるため、即座に不良原因が判り高い生産品質につながります。
画像認識技術
画像認識技術
専用カメラと多様な認識方法で、安定した部品認識を実現
部品認識専用カメラと多様な照明方式により、小型チップからIC部品や大型・異型部品まで撮影することで、部品の位置決めと不良がないかを判定します。部品を同時に下と横から異なる波長の照明を照射することで、下からの画像処理でXY座標を、横からの画像処理で部品の厚み寸法を計測でき、高速化が可能となります。
3D画像認識(検査機)
DLP方式投影装置で鮮明に撮像
投影・撮像を駆使し3次元で検査する技術です。ヘッドユニットにDLPプロジェクターを4方向に配置し、32パターンの縞模様の光を部品に投影することにより測定精度が向上できます。
高精度ピン認識技術
異形部品挿入の画像認識
挿入部品のリードを3次元画像処理することでピン部分のXYの位置、長さの違うボスやピンなどを一括認識できる技術です。ラフな形状が多い部品へも画像認識ができ、正確な位置決めを実現します。
etc...
さらにJUKIのコア技術を知る
工場全体を支える技術
多品種少量生産や変種変量生産への変革が求められている中、さらなる効率性の向上と、工場全体での生産管理の実現が課題となっています。JUKIでは、ロボット化・デジタル化を通じて、スマート工場への取り組みを進めています。
縫製工場
縫製工程だけでなく、前工程、後工程を含めた自動化、デジタル化により、生産効率をさらに向上させ、工場全体をネットワークでつなげ、生産進捗を可視化。JUKIは、お客様の課題に耳を傾け、お客様個々の生産状況に沿ったスマートファクトリーを構築しています。
基板実装工場
実装ライン、また工場内の装置をネットワークで結び、生産の進捗や設備の稼働状況などをリアルタイムに表示させる「生産の見える化」システムを提供。IoT、M2M(※)、AIなどの最新技術を活用したスマートファクトリーを構築しています。
※M2M:Machine to Machineの略
スマート工場で
活用されている技術
縫製工場
フレキシブルな生産を実現
デジタルミシン・JaNetsシステム・ハンガーシステムの連携で、生産性・品質の向上に加え、人の働き方や変種変量生産にもフレキシブルに適応する生産ラインを構築することができます。
活用されるさまざまな技術
デジタルミシン
“縫い目”の調整値を保存でき、ジャケットからワンピースへ、夏服から冬服へなど、縫製アイテムの変更を瞬時に切り替えすることができるミシンです。
JaNets(Juki Advanced Network system)
一 縫製管理システムソフト 一
ミシンをネットワークに繋ぐことで、各ミシンの稼動情報がリアルタイムに見える化され、データを分析することで改善活動につなげることができるシステムです。
ハンガーシステム
生地パーツをハンガーに吊り下げ、一連の縫製工程に沿って自動搬送する装置です。生地の取り回しや次工程への手渡しの手間が省けます。
基板実装工場
工場全体の設備をつなげ省人化生産を実現
マウンタや実装関連装置、自動倉庫などの基板実装工場で使用される装置をシステムで連携させ、部品受け入れから完成品出荷までの生産の見える化やトレーサビリティを実現します。
活用されるさまざまな技術
JaNets(Juki Advanced Network system)
一 実装統合システムソフト 一
基板ごとの生産プログラムを作成するソフトウェアです。複数の生産プログラムを保存でき、生産の順番を指定することで、自動で生産を切り替えられます。また、検査機で発見された不良を前工程の設備にフィードバックし、自動補正を指示する機能など、設備の稼動状況やエラーを可視化し、分析・改善につなげることができます。
IFS-NX(Intelligent Feeder System )
部品の残数管理や誤装着防止を行うソフトウェアです。部品の保管・入出庫を行う自動倉庫との連携により作業効率を向上できます。
製造工場
ハイレベルなものづくりの代行
JUKIの主要製品である工業用・家庭用ミシン、実装機器の設計・開発や生産工程のノウハウを生かし、幅広く高度なものづくり力で、さまざまなものづくり工場の人手不足や脱技能・スマート化を支援しています。
活用されるさまざまな技術
受託開発・製造(ODM)
JUKIの開発・製造のものづくり力を結集させ、素材から加工・表面処理、また部品調達から電子機器や設備の開発・組立まで幅広くお客様の“ものづくり”を支援します。
JUKI自動倉庫
小型部品や軽量・小物商品の入出庫や在庫管理を自動化できます。管理はバーコードで行うため、大量の在庫の中から、必要なものをピンポイントで取り出せます。
JUKI検査・計測
金属部品の外観目視検査を自動化できます。技能と経験を要する外観検査を定量化・標準化することができ、製造ラインのインラインに組み込むことができます。
技術を支える自社・
グループ工場の取り組み
お客様の期待を裏切らない確固たる品質のものづくりをしているのが、JUKIの大田原工場とグループ工場です。
JUKIは、日本、中国、ベトナム、インドでのグローバルな生産戦略と工場のDX化、GX化を通じて、“ものづくり”の進化に取り組んでいます。
全製造グループ会社の「生産技術」力を結集し、自動化・ロボット化を推進しています。重労働や人体への影響が懸念される作業のロボット化や、危険域侵入の際の機械の自動停止の導入など、安全で安心して働ける職場を構築します。また、製造データ・ノウハウのデジタル化を行い、自動化・ロボット化と連携させた製造効率の良いものづくりを推進しています。
大田原工場について
大田原工場は、工業用ミシンの生産拠点として1971年に竣工した工場です。世界ナンバーワンのシェアを誇るJUKI工業用ミシンの製造拠点、グループのマザー工場として、数多くの先進的な試みを行っています。
工場の高効率生産を行うための生産ライン構築や、治工具の設計を行う生産技術部門では、工業用ミシンの生産を品質良く、無駄がなく、効率の良い生産を行うために、スマートな工場を目指した取り組みを行っています。