お名前:星ヶ丘洋裁学校さん
星ヶ丘洋裁学校を営む一般財団法人 星ヶ丘学園は、1948年(昭和23年)に設立。今も当時の自然環境や木造校舎を大切にしながら、先生も生徒も“共に学ぶ”をモットーに、自分らしくものをつくる場を目指す学校。「陶芸教室」「絵画教室」「自然の会」などの文化教室があるほか、ファッションを含めたアートの展示スペース「SEWING GALLERY」では、季節の恒例イベント、生活・アートに関わるワークショップなども開催している。2023年03月「星ヶ丘洋裁学校のソーイングレシピ(主婦と生活社)」を出版。
使用ミシン:
職業用ミシン「TL-30(シュプール30)」
職業用ミシン「TL-25」
ロックミシン「MO-114D」
大阪・星ヶ丘で1948年から75年も続く「星ヶ丘洋裁学校」。戦後から高度成長期にかけて日本が躍進した時代、「共に学ぶ」をモットーに、洋裁の技術を通して自立心と教養のある女性を育て、世に送り出してきました。やがて、大量生産、大量消費の時代に入り、暮らしに必要な技能、あるいは自立の手段として洋裁を学ぶ女性は激減。1994年にはやむなく休校し、存続が危ぶまれたことも。1998年に新体制で再開した際は、生徒がたった1人だった時期もありました。しかし、2000年代に入り、自分の手で好きな服をつくる豊かさとともに、この場所でしか得られない“何か”を求めて、再び人々が集うように。ものづくりを愛するすべての人に開かれた場所になっていきました。(「星ヶ丘洋裁学校のソーイングレシピ」より抜粋)
2018年には在籍者が100名に。学校には「基礎科」「本科」「パターンクラス」「研究科
」があり、在籍者の割合はそれぞれ8%、72%、10%、10%(2018年時点)。2023年現在は、130人前後の方が在籍しています。
―――――――――――――――
「 卒業しても、いつまでもいてもいい 」
生徒さんは、今ちょうど130人くらいいらっしゃいます。1番長い方ですと、もう17~18年になるでしょうか。生涯教育的にいつまでもここにいていいので。卒業してもいつまでも。厳密に言えば「生徒」ではないのですけどね。ここ「星ヶ丘洋裁学校」はずっと楽しみながら学び通うことができる場所なんです。
「 人と一緒が楽しい。まずそれが一番 」
みんなでいると、自分だけの世界ではなく、人の世界も見ることが出来ますよね。人の世界を見た時って、すごく参考になって勉強になるんです。それも楽しみながら。例えば、誰か一人がいい服を作ったら、それを見た方が同じようなものを作るといった「連鎖」が起こるんです。「連鎖」でいうと、ご自分で洋服を作ってこられる先生がいらっしゃって。「こんなの作ったよ」と言うと、生徒さんが「あ!私もそんなの欲しい」となり作り始めるんです。ここではほとんど(自分の体型に合わせた)原型で服を作りますので。
人と一緒がすごく楽しい。まずそれが一番かなって思います。
「 JUKIが当たり前なんです 」
学校のミシンはJUKIのミシンです。
再開校(23年前)する際、先生をお願いした方に「JUKIがいいのではないか?」と勧めていただいいて。それからずっとJUKIのミシンです。
ここに入られてからミシンを買い替える生徒さんもとても多いんですが、ほとんどの方が元々「家庭用ミシン」しか持っていらっしゃらなくて。ですので、ここに入って「職業用ミシン」を使ってみると、やっぱり「直線縫い」が全然違うんですよね。そうして、大体の方がJUKIさんの「職業用ミシン」を買われるんですよ。
私たちはJUKIのミシン以外考えたことがなくて、JUKIが当たり前なんです。
JUKIのミシンはすごく古いミシンであっても修理して使えるようになりますし。
現在、学校には職業用ミシンが14台、ロックミシンが8台あります。
「 ステッチを縫ってみるとわかります 」
「職業用ミシンは本当に使いやすい」と私たち思っているんです。職業用ミシンって機能が少ないですよね。それゆえ、その分、すごく綺麗に縫えませんか?たくさん機能があると逆に使いにくい部分もあると思うんです。例えばステッチをひとつ縫ってみるだけで、家庭用ミシンとの違いがわかりますよね。
「 便利過ぎると少し不安も 」
(ミシン周りの)便利な道具も使いますけど、学校としてはあまりすすめてはいないんです。縫製工場で50年以上働いてきた方は、道具が無くてもとても綺麗に縫っていらっしゃるので。便利過ぎると少し不安になってしまうんです。「こんなに便利になっていいんだろうか?」って。だから学校で揃えるのは最低限。でも、個人で、例えば隣の人が使っている道具を見て「あ、便利そう」って思って買ってもらうのは全く問題ないですよ。
「 はぎれは色々と使いますね 」
11月には年に一度の学園祭「秋のフェスタ」があります。
その中で、「使い切る着るグランプリ」というコンテストを行いました。
内容は、服づくりで出るはぎれを他のものに生まれ変わらせるというもの。生徒さん達が様々な作品を作りました。多くの方は、はぎれを組み合わせて服を作られました。携帯ケース、バッグを作った方もいらっしゃいました。グランプリは男性の方が取ったんですよ。
こういったコンテストは初めてだったんですけど、はぎれは色々と使いますね。「秋のフェスタ」では玉入れなどのゲームもするんですが、その際に使用する玉は中身も外側も端切れを使用して作ったりしています。
「 ものを大事にすることは人を大事にすること 」
「手でものを作ること」は、「ものを大事にすること」だと思うんです。段々とその傾向になってきているように思うのですが、「ものを大事にすること」は「人を大事にすること」のように思えます。だから、ものを大事に出来ないと、人の心も大事に出来ないのではないか、と感じます。
みなさんが丁寧に服を作って、それを大事に着ておられることが嬉しいです。本当に服を作ることが好きで、作り出したら夜も寝られないっていうくらいの方も結構いらっしゃるんですよ。「こうだから楽しい」ではなく、理屈なしに楽しんでおられることが嬉しいんです。自分の手で生み出すことに理屈は無いと思うんです。
布が好き、生地が好きであれば、洋裁にきっとはまると思います。洋裁を学びたいと見学に来られる方でも、この要素があれば、面白いって思ってもらえて長く続くように思います。
1948年大阪府枚方市に戦後女性が自立できることを目的とし設立された洋裁学校。自然豊かな環境のレトロな校舎で、それぞれの目的に合わせた授業を行います。同じクラスに老若男女が在籍、違いの中で多様性を学ぶユニークなスタイル。
四季のイベントや行事(桜花会、七夕、秋のフェスタ、針供養、しめ縄作りほか)を通じ、ゆるやかにつながるコミュニティ。まさに、今の時代に求められる「学校」なのです。
本書では、聞き語りのエッセイで学校の魅力を紹介しながら、新作レシピも掲載する新しい洋裁本です。
==========
発売日:2023年03月17日
出版社:主婦と生活社
定価:1,760円(税込)
判型:A5
ISBN:978-4-391-15865-6
ページ数:112
==========
取材:2023年6月