お名前: PHONON(フォノン)さん
活動場所: 愛知県
ミシン歴: 本格的に始めてから約3~4年
Facebook:PHONON
ホームページ :https://www.scope.ne.jp/phonon/apron/
デザインが本業なので、打ち合わせや現場の移動中に車の中で過ごす時間が多くて、ズボンのポケットの中にあるものをゴソゴソ探すことが多いことに気づいたんです。
その行動がなんともかっこ悪いなと思って…、なにか改善できないかなと思いました。
もともとカバンを持っていない男はかっこいいという勝手なイメージがあって、僕はカバンを持つといつも荷物が多くなるタイプで、家出みたいになっちゃうんです。(笑)
もっとスマートに収納するには、服に収納できるものがあればいいなと思い、服の一部にしちゃえと思って。
市販ではなかなか思うものがなかったので、「じゃあ作ってみよう!」って、エプロンの開発をスタートしました。
必ず持ち歩きをするスマホやペンが収納できるように胸ポケットは3分割して、
サイドポケットには鍵やお財布など何でも入れられるように自分のために作ったのがはじまりです。自分が便利なものが欲しいなって、ただそう思ったんです。
僕は仕事でいろいろなデザインをしています。
でもなぜか洋服やエプロンは買うものっていう認識だったので、当初は作って、しかも売ろうなんて全く思わなかったですね。
基本的に貧乏根性で何でも自分で作ってしまうタイプなのですが、なぜか洋服だけは作ろうとしてなかったんですよ。
そんなときにハッと気づいて、「自分でも作れるんじゃないの!?」って思って、まずは道具からと思い、ミシンを買いに大羽ミシンさんへ行きました。(笑)
その後、HZL-DX5を購入したのは、約1年前くらいですかね。
全然買う気もなくお店に行ったら、ボタンホールが衝撃的に綺麗って紹介されて、「嘘~」って思いながら実演で見せてもらったら、もの~~すごく綺麗で!!
それまではボタンホールが作りたいときは業者さんに頼んだり、サンプルであれば、手縫いで縫ったりしていたんですけど、実は、なるべくボタンホールがないデザインを作っていたんですよね。
ボタンホールが縫えることによって、表現の幅が広がると思うと、このミシンがないとダメだと思い、買うことを決めました。そして、実際に買って大正解でした。
当時、ボタンホールに興味があるころ、このエプロンを制作してもらっている工場に行ったらJUKIの工業用ミシンのボタンホール専用機をみたんです。
「あっこれを買えばいいんだ!」と思って、値段聞いたらすごい値段するし!(笑)
今まではボタンホール縫いがしたいとき、どっか工場に出すかしかないと言われていましたが、このHZL-DX5を買ってからは、家庭用ミシンでありながら完璧に仕上げてくれています。
※以下動画はEX7のものですが、DX5も同仕様です。
厚物の素材や段差があってもこのHZL-DX5は生地の進みがよくて、他社のミシンよりもぶっちぎりで綺麗です。
帆布などの厚い素材を主に使用しているので、この送り力は格別ですね。
※BOX送り
送り歯が水平に動き、布と多く長く接するため、目詰まりなくしっかり送ることができます。
私はカフェも営んでいるのですが、カフェの従業員の制服は、工房で全部手作りしています。
実際に使ってみて、ここにステッチを一本追加したほうが耐久あるな~とか、ここはスナップボタンにしてとりやすくするためのループ付きにして作ったり、使いながら使用者の意見をまたフィードバックして、次の制作に生かしています。
デザインだけじゃなく、使い勝手や機能性も含めて考えながら縫っていますね。
縫い以外でもこだわりがあって…
例えば、留め金具が背中にあると長時間のドライブではシートに挟まれ違和感があるし、前で結ぶと万一解けた時には安全運行に支障をきたす。 それでサイドオープンに出来る構造にしました。
このホックはサイドポケットからものを取り出したときに外れると困るので、特殊なホックを使っています。
実はこれオープンカーの幌を留める金具が使われています。はめるときは押し込む、はずすときは引っ張るだけ。でも普段は絶対に外れない。これはクラシックカーについているものなんですよ。
先日もこれを作りました。
ハンティング用のベストがモチーフになっていて、打った獲物をここの胸ポケットに入れたり、両サイドのポケットはカートリッジシェルといって、本来の用途は薬きょうを入れられるようになっていますが、僕は財布やカードケースやスマホなど、たっぷり収納できるようにしました。
普段は仕事でお客さんからの依頼でデザインをしていますが、自分のためにデザインしてもいいんじゃないかという思いで、淡々と作っていると、「これいいね!」っていうのがだんだんと広がっていって、いつしかSCOPEのサイトで扱っていただけるようになりました。
エプロンや作業着に関してはあったらいいな~っていう自分が欲しいものを形にしています。
世の中にないものを作るのが面白いですね。
買えるものは買ったほうが絶対いいと思うんですよ。僕よりもすごい人たちがデザインしているので(笑)
でも自分の生活の延長線上で、「無いんだったら作ればいい!」っていうのを素直に形にできるのってソーイングもその一つなんですよね。
日頃、建築の現場では、大工さんがいろいろな技術を駆使して、材料揃えたりして大がかりですけど、ソーイングは布と糸とミシンがあればできちゃう。そんなミニマムな表現領域がとても興味深いです。
ソーイングは思ったことをすぐに形にできるって、案外みなさん気づいていないですよね。
最近僕も知りました。(笑)
すぐに手に取って制作できるっていうのはとても魅力です。
誰にも教えてもらったことがないので、縫い方が独特なんですよ。
サンプルを工場生産しようと工場に持ち込んだ時に、工場のプロが「この作り方がわからないです」って。「どうやって作った?」って言われました。
ソーイングを勉強されてきた人とのベクトルが違う私は全く違うところで物を作っていて、初めて会ったときに工場の方にとても面白がられて…。
ただ工場の人が簡単に考えることを難しく考えてしまっていたということもありましたけどね。
専門分野ではない人間が服作りをするっていうのは、本当に面白いなって思います。
普通がこうだよっていうのが全くないので、そこがまた面白いですね。
たまに軍用のものを解体して、どうやって作っているんだろうってみたりもします。
研究・実験をずっとしていますね。だから工房はガラクタばかり。軍用のものって、すごく合理的なんですよね。
一般のアパレルと比べると雑な部分もあったりするんですけど、生きるか死ぬかのところにいる人が着ている服なので、作りがはっきりしている。そういうところもすごく興味深いなって。
イメージソースはそれらのものから引用することが多いですね。
我々の日常のものって案外戦争の産物だったりするんですよね。
僕は全く戦争肯定派ではないんですけど、僕らの日常生活が便利に送られているのって、ほとんど軍事から降りてきた技術なのです。突き詰めた本物を探していくと自然とそこに結びつくんですよね。
JUKIも戦争中に陸軍が使用する機関銃や短小銃を生産されていたんですよね。
ミシンの釜が回転している動きを見て、JUKIもそうかなって思ったらやっぱり!(笑)
とっても有効な平和利用なんだと思います。
例えば現代の服を見てもほとんどそうですよね。
ダッフルコートやトレンチコートもイギリス軍で防寒着として広く使用されていたのが今では定番アイテムの一つですよね。
この工房では、デザイン・企画開発をしながらサンプルを制作する、いわるゆマスターキーをつくっているので、最終的には縫製工場へ生産依頼しています。
時間の合間にほかのものを作ったりして、年に1回程度販売しています。
こうして「うまくできすぎたサンプル」はそこで販売していますよ。
これだったらできるっていう可能性が無限に広がっています。
糸と布とミシンがあれば、ほかには代えられない特別なものがありますよ!
1941年の創業以来、ミシンの修理を自社で行い、ミシンの楽しさをご提案させていただくことでお客様と末永くお付き合いいただいております。
売ったら終わりではなく、ミシンの修理・講習会・イベント・体験など含めて常にお客様に発信しています。
ミシンをご購入いただいたお客様へは、とにかくミシンを使っていただくというご提案をずっとし続けるというのが弊社のポリシーです。
また購入後のアフターサポートにも力を入れています。
長く使っていただくために、購入後、故障していなくても半年後に1回、一年後に1回、無償でメンテナンスサービスを行っております。5年保証もしており、部品交換や出張費も無償対応しています。
購入検討されている方は、購入前になるべくミシンに触れる機会を作ってもらいたいですね。弊社では、いつでも縫って試せるお店づくりを目指しています。
「買ったけど使わない」・「買ったけど無駄だった」っていうことがないようにミシンを使用する環境を弊社からご提供しています。
ミシンの楽しさをよりたくさんの人に知ってもらい、ひとりひとりのお気に入りの毎日を紡ぐ存在になりたいです。
ミシンのことで困ったことやわからないことがあれば、お気軽にご相談ください。(大羽ミシン様)
取材:2017年10月